気管支鏡インターベンション

気管支鏡インターベンションとは?

気管支ファイバースコープ
軟性気管支鏡
(気管支ファイバースコープ)
硬性気管支鏡
硬性気管支鏡

気管支鏡という内視鏡(カメラ)を用いて行う治療の総称です。気管支鏡を口や鼻から体の中に入れ、喉を通って気管や気管支といった気道の内側を見ます。

気管支鏡には、軟性気管支鏡(一般的な内視鏡で、気管支ファイバースコープとも呼ばれます)と硬性気管支鏡(円筒状の金属製内視鏡)があり、状況に応じて使い分けます。

気管支鏡インターベンションは、命に関わる気道の処置を行うため、危険性が高い処置の一つです。当院は日本呼吸器内視鏡学会認定施設であり、複数の気管支鏡指導医・専門医が在籍し治療にあたっているほか、硬性気管支鏡を保有し使用できる数少ない施設(2010年学会アンケートでは全国施設の20%弱)の一つです。これら様々な道具の適応や応用に関する知識と、これらを使いこなす技術により最適な治療を行っております。

一般的に気管支鏡インターベンションが適応となるのは、下記のような場合です。

  1. 気道狭窄
  2. 気道出血
  3. 気道異物
  4. その他

①気道狭窄(通り道が狭くなること)

デューモンステント(シリコンステント)の写真
デューモンステント
(シリコンステント)
ウルトラフレックスステント カバー付きタイプ(金属ステント)の写真
ウルトラフレックスステント
カバー付きタイプ(金属ステント)

気管や気管支などの狭窄は、肺がんや気管がん、周囲の悪性腫瘍(食道がん、甲状腺がんなど)や転移リンパ節による圧排や浸潤が原因で起こります。このほか、結核や良性腫瘍、気管切開後の狭窄や、軟骨炎など悪性腫瘍ではない原因によっても起こります。このように、さまざまな原因があり、狭窄の範囲も異なるため、状況により治療方法を考える必要があります。

治療の対象は、気管や太い気管支に高度な狭窄が有り、これが原因で呼吸困難などの症状が生じている場合や、窒息など致死的状況の回避が必要な場合などが一般的とされています。

治療の方法は、「狭窄の解除」と「再狭窄の予防」を行うことです。「狭窄の解除」のために、当科では効果・安全性・汎用性からレーザー治療(Nd-YAGレーザー、ホルミニウムレーザー)、高周波治療(ホットバイオプシー鉗子、高周波スネアなど)、硬性気管支鏡による削り取り、風船状の器具(バルーン)による拡張術などを組み合わせて行っています。

また、「再狭窄の予防」のために、ステント留置を行うことが有ります。ステントとは、空気の通り道を確保するための筒状のもので、種類としてはシリコンステント、金属ステント、金属ステントの周りを膜などで被覆したハイブリッドステントに大別されます。

シリコンステントは良性・悪性の気道狭窄に、金属ステントは悪性の気道狭窄に用いられます。シリコンステントは留置後に抜去可能であり、内腔保持力が高いなどの利点がありますが、挿入には全身麻酔の上に硬性気管支鏡を用いた処置が必要です。一方、金属ステントは軟性気管支鏡での挿入が可能で、屈曲の強い気道狭窄にも対応でき、場合によっては局所麻酔での処置も可能です。ただし、挿入後の抜去が困難であり、金属疲労などによる劣化破損などの報告もあるため、適切なステント選択が必要です。

ステント留置の主な合併症としては、留置時の出血や低酸素血症、ステント内への分泌物(痰など)貯留による呼吸困難、ステント端の肉芽形成、留置部位からのステントのずれが有ります。

気道にステント留置を行う様子
例:悪性腫瘍による気道狭窄があり、レーザー治療後、ステント留置を行いました。​​

②気道出血

出血量や部位・原因など、それぞれの状況によって対応方法を考慮する必要があります。止血剤のみでコントロール困難な場合、追加の処置を要します。手術切除が必要な場合や、放射線科医によるカテーテル治療(気管支動脈塞栓術)、気管支鏡インターベンションなど考慮する必要があります。気管支鏡での処置では、レーザー治療やステント留置で止血を試みることが有ります。

③気道異物

気道異物とは気管、気管支内にとどまってしまった異物のことです。主に呼吸器科や小児科、耳鼻科で扱います。異物を誤嚥してもたいてい自力での喀出(吐き出すこと)が可能ですが、異物の形状や性状、乳幼児・高齢者など喀出力が弱い場合に、喀出しきれず問題となります。そのままでは気道を閉塞し窒息を来す可能性や、肺炎など感染症を引き起こす可能性があり、迅速かつ確実に異物を摘出する必要があります。

異物の種類としては、乳幼児ではピーナッツなどの豆類や小さな玩具が多く、成人では義歯や魚骨、錠剤やカプセルの包装、豆類や果実の実が多いとされています。患者さんに問診を行った上で、気道異物が疑われる場合にはレントゲン検査や胸部CT検査で、異物の形状や位置を確認します。

治療としては、軟性気管支鏡による摘出が第一とされ、把持鉗子やバスケット鉗子、バルーンカテーテルなどを用いて行います。しかし異物が尖っていて気道に食い込んでいる場合や、長期経過により周囲に肉芽が増生している場合など摘出が困難な状況では、硬性気管支鏡の使用や手術による摘出が必要となる場合もあります。

④その他

難治性気胸に対して、EWSというシリコン製の気管支充填剤を用いて、気管支にフタをして、肺の中から空気漏れを止める処置を行うことがあります。

難治性気胸に対して気管支充填剤を用いて、気管支にフタをする様子